西尾心理療法指導室うつ病 自律神経失調症 緊張症

「対人関係・人間関係・職場で学校で!悩んでいる方へ」コラム


「対人関係・人間関係・職場で学校で!悩んでいる方へ」

当指導室へ相談に来られるクライエントの症状には様々なものがあるのですが、カウンセリングの中で現実の生活場面で困っていることをお聞きすると、非常に多くの方が「職場での人間関係がうまくいきません」「学校で友達と上手に関われません」等々、対人関係での悩みを訴えられます。

一般的に人間は誰もが「職場」「学校」「家庭」などのコミュニティに所属し、他人(他者)と関わりながら生活をしています、極端な言い方をすれば殆どの人は他者との関わり無しには生活をして行くことは出来ないのです。
この生活をして行く上で避ける事の出来ない他者との「対人関係」がうまくいかないことは、当事者にとって非常に大きな悩みであり、また大きなストレス要因となりえます。

当指導室のカウンセリングを行う中で、この様な「対人関係」に関する悩みを持つ方の性格的な特徴として個人的に感じるのは、「全ての人と仲良くしなければいけない」「他者に迷惑をかけてはいけない」「他者から良く思われなければいけない(悪く思われてはいけない)」の3つが必要以上に強い傾向があるということです。

この3つの傾向を見て何か思い出された方もいるのではないでしょうか、私は子供の頃(幼稚園くらいですかね?)両親や幼稚園の先生に「お友達とはみんな仲良くしなさい!」「周りに迷惑をかけてはいけないよ!」「人から嫌われるようなことはしちゃダメだよ!」と、事あるごとに教えられてきた記憶があります。この教え自体はなんら間違った教えでは無いと思います、一緒に幼稚園に通う友達と仲良くするにこしたことはないし、周りから好かれて褒められる方が良いに決まっています、しかし同時にこの教えは絶対に実現不可能な教えだということを私は成長する中で体験的に学んできました。

もちろん意図的に人を傷付けようとしたり迷惑をかけてやろうとしたりすることは、やってはならないことですし今後もしない様に気を付けるつもりですが、自分が望むと望まざるに関わらず迷惑をかけてしまったり人から嫌われたりすることは、「対人関係」の中でごく普通に起こりえる事なのです。このごく当たり前に起こる状況を「あってはならないこと」と考え他者と関係を作ろうとすれば、非常に不自然な「対人関係」になり結果としてその歪はストレスとなって慢性化し本人の心身に影響を及ぼすことにも成りかねません。

不自然な「対人関係」と書きましたが、具体的には「他者主導の対人関係」とでも言うのでしょうか、嫌われない様に!良く見られるように!迷惑を掛けない様に!これら全ては他者がどう感じているか…が主導となっての関わりです。しかし他者がどう感じているかは関わる人それぞれに多様であり、又それを推測することは出来ても正確なところを明らかにすることは出来ないのです。明確で無いものに重きを置いて物事を考えると多くの人は負の方向へ考えてしまいます、つまり「気分を害してしまうのではないか」「自分は嫌われているのではないか」「迷惑を掛けているのではないか」です。

この様な態度で他者と関わることは本人にとってそれ自体が大きなストレス要因となり、また関わる相手も本当のあなたの気持ちを図りかね、深い関わりには成りにくいのではないかと考えます。

「自分が変われば相手も変わる」という言葉を耳にすることがあります。確かに「自分が相手にやさしく接すれば相手もやさしくしてくれる」「笑顔で接すれば相手も心を開いてくれる」ということはあるかもしれませんが、実際には他者には他者の想いがあり・性格があり・思考のタイプがあり・そしてそれは多様です。全ての人に一人が合わせる事は出来ないのだから、重きを置くべきは「自分はどう考えているのか」「自分はどうしたいのか」であり、その為に「どう話せば相手が怒らないか」「どう行動すれば迷惑をかけないか」と考えるのではなく「どう話せば自分の想いが伝わるのか」「どう行動すれば自分の目的に近付けるのか」と考え他者と接することで、結果として自分の素直な想いを伝える事となりそれに共感してくれる人とは仲良くできるでしょうし、もちろん考えの違う人とはそれなりの付き合いになるでしょうが、それこそが「自分が変わる」(自分の他者に対する感じ方を変える)ことであり、全て相手主導で不自然な関係を続けて行くよりも、自分にとって又相手にとっても健全な「対人関係」と言えるのではないでしょうか。

「そんな風に簡単に考えを変える事が出来たら苦労はしないよ」と思われる方も多いでしょう、しかし考え方を180度変える必要はありません。他者を思いやる気持ちは大切なことですからそれを全て自己中心的な考えに変えるのではなく、他者の気持ちを思いやる事にプラスして自分の想いをうまく伝える事が出来るようになる、多様性のある接し方が出来る様になって行けば、「対人関係」の悩みはずっと少なくなるでしょう。

以前のコラムでカウンセリングを含む「心理療法」は様々な環境や出来事に対して一つに偏った心の反応だけなく、多様性のある感じ方(ゆとりのある性格)を身につける事が目的であると書きました、「対人関係」は誰にとっても身近にあるものですし生活の大部分に関わる環境でもあります、皆さんも今一度自分の他者に対する接し方を考えて見られてはどうでしょうか。

                                       

     西尾心理療法指導室               2017/03/06    西尾浩良